感染対策におけるゾーニングとは?考え方のポイントと実例を紹介

ニュースなどでよく耳にするゾーニング。その意味や効果とは

感染対策におけるゾーニングとは?考え方のポイントと実例を紹介

・公開日:2021.11.09最終更新日:2022.03.07

※免責事項
本コンテンツは一般的な情報の提供を目的としており、法律的、税務的その他の具体的なアドバイスをするものではありません。個別具体的事案については、必ず専門家にご相談ください。
本コンテンツの情報は、その情報またはリンク先の情報の正確性、有効性、安全性、合目的性等を補償したものではありません。
また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。

病院や保健所、宿泊療養施設などの医療機関に求められる感染対策の1つに「ゾーニング」があります。

この記事では、ゾーニングの定義と感染対策としての考え方・配置パターンの例などを解説しています。

医療現場で必要とされるその他の感染対策についてもまとめているので、合わせて参考にしてみてください。

新型コロナウイルスの感染対策に伴うゾーニングとは

新型コロナウイルスの感染対策に伴うゾーニングとは

ゾーニング(Zoning)には「区分する」という意味があり、本来は土地の区画割りに用いられる言葉です。

日本では、都市計画や住宅建築における空間の区分を指したり、コンテンツや情報の利用に伴う年齢の区分を指したりするなど、より広義的に使われています。

ゾーニングの細かい意味や考え方は業界によって様々で、以下はその一例です。

  • オフィスでのゾーニング……動線の作り方や受付・会議室などのレイアウトを考えること
  • リテール業界でのゾーニング……売場構成や商品棚の陳列レイアウトを考えること
  • テーマパークでのゾーニング……テーマごとのカラーリング・衣装やターゲットを考えること
  • 飲食業界でのゾーニング……従業員・客の動線や空間のレイアウト・インテリアを考えること など

また病院や保健所・介護施設・宿泊療養施設などの医療現場でも、ゾーニングによる感染対策が重要視されています。

医療現場におけるゾーニングとは、感染対策を目的として、病原体に汚染されている「汚染区域」と汚染されていない「清潔区域」で区分けすることを指します。

院内感染やクラスター発生による感染拡大を防止するには、このゾーニングによる行動エリアの制限が不可欠であると言えるでしょう。

ゾーニングの考え方と配置方法の例

ゾーニングの考え方と配置方法の例

続いて、医療現場でのゾーニングによる感染対策の考え方と、実際にゾーニングを行う場合の配置パターン例について詳しく見ていきましょう。

ゾーニングのポイント

新型コロナウイルスの感染対策としてゾーニングを行う場合の考え方のポイントは以下の通りです。

明確なゾーニングでの感染対策

病原体に汚染されている「汚染区域(レッドゾーン)」と、病原体に汚染されていない「清潔区域(グリーンゾーン)」を明確に区別しましょう。

パーテーションを設置したり、テープを貼り付けたりして、境界ラインをはっきりさせることが重要です。

職員の集まる場所は清潔区域に含める

スタッフが汚染区域内に常駐するようなケースでは、スタッフに大きなストレス・疲労の負担がかかる他、院内感染やクラスター発生のリスクも高まります。

そのため、事務所やナースステーションなど、スタッフが滞在するエリアに関しては極力清潔区域に含めるようにしましょう。

個人防護具の着脱場所のゾーニング

個人防護具の着用場所・脱衣場所は明確に区分けを行いましょう。

通常は汚染区域に入る前に個人防護具を着用し、汚染区域から出る際に脱衣を行うという流れになるため、この流れを想定した動線づくりがおすすめです。

また脱衣場所には手袋や帽子などの使い捨て製品を廃棄するための容器を設置しておきましょう。

院内の感染対策

清潔区域だからといって安心せず、汚染リスクの高い場所を中心にこまめな掃除・消毒などの感染対策を行うことが大切です。

また清潔区域・汚染区域のどちらにおいても、十分な換気が求められます。

換気を行う際は、扇風機などを設置して清潔区域から汚染区域の方向へ空気が流れるよう工夫しましょう。

配置パターン①基本的なゾーニング

基本パターン(入院患者・入所者が病室から出ない場合)のゾーニング例は以下の通りです。

  • 汚染区域:病室内・清潔区域:その他
  • 病室前の廊下で防護具の着用を行い、脱衣については病室内の扉近く(汚染区域内)で行う
  • 新型コロナウイルスの感染者は原則として病室内でのみ生活を行う
  • 新型コロナウイルスの感染者がやむを得ず病室の外へ出る場合は、専用ルートの確保または時間の限定を行う など

配置パターン②病院内(病棟)の一部を汚染区域と設定する場合

新型コロナウイルスの患者に対応できるスタッフが少ないなどの理由から、病棟の一部を汚染区域としてゾーニングする場合は以下のような感染対策が求められます。

  • 汚染区域:病室内と病室前の廊下・清潔区域:その他
  • 汚染区域の廊下と清潔区域の廊下の境界となる部分にはパーテーションを設置する
  • ナースステーションで防護具を着用し、脱衣については汚染区域の出口近くで行う など

配置パターン③病院内(病棟)の大部分を汚染区域と設定する場合

新型コロナウイルスの患者数が多い・トイレが共用である・防護具が不足しているといった理由から、病棟の大部分を汚染区域としてゾーニングする場合の感染対策例は以下の通りです。

  • 汚染区域:病室内と廊下の大部分、共用トイレなど・清潔区域:その他(ナースステーションを含む)
  • 汚染区域の廊下と清潔区域の廊下の境界となる部分にはパーテーションを設置する
  • 清潔区域の中で防護具の着用を行い、脱衣については汚染区域の一角(清潔区域との境界)で行う など

医療現場に必要なその他の感染対策

医療現場に必要なその他の感染対策

病院や保健所などの医療現場では、ゾーニング以外にも様々な感染対策が必要となります。

例えば、新型コロナウイルスの感染者および感染が疑われる方と接する場合には、ゾーニングと合わせて以下のような感染対策を行うことが推奨されます。

  • 標準の予防策に加え、接触・飛沫に対する予防策を行う
  • 個室での診察・入院が推奨される
  • 診察室および入院病床の十分な換気
  • 患者の移動を要する場合はサージカルマスクを着用し、医学的に必要な目的に限定する
  • サージカルマスク・目の防護具・長袖ガウン・手袋を装着する(上気道の検体採取を実施する場合)
  • 長袖ガウン・手袋・帽子・覆布(ドレープ)などは極力使い捨て製品を使用する など

また新型コロナウイルスとは関係のない患者さんであっても、無症状・無自覚の状態ですでに感染しているというケースもゼロではないため、病院全体として感染対策を徹底することが大切です。

状況を問わず実施できる感染対策には、手洗い・手指消毒や空間除菌剤の活用などが挙げられます。

手洗い・手指消毒は日常生活含め常に必要となる感染対策ですので、正しいやり方を身に付けてこまめに実施するようにしましょう。

正しい手洗い・手指消毒の方法は以下の通りです。

手洗いの手順

  1. 流水で洗浄する部分を濡らす
  2. 薬用石けんを手のひらにとり、手のひらを洗う
  3. 手のひらで手の甲を包むように洗う
  4. 指・指の間を洗う
  5. 親指の周囲を洗う
  6. 爪を洗う
  7. 手首を洗う
  8. 流水で洗い流す
  9. ペーパータオルなどでふき取る

手指消毒の手順

  1. 消毒液を手のひらにとる
  2. 両手の指先に消毒液をすり込む
  3. 手のひらにすり込む
  4. 手の甲にすり込む
  5. 指の間にすり込む
  6. 親指の周囲にすり込む
  7. 手首にすり込む

また置き型タイプの空間除菌剤を設置して、常時空気の清浄化を行えるようにしておくのもおすすめです。

空間除菌剤には二酸化塩素や次亜塩素酸水といった有効成分が含まれており、空気中に浮遊するウイルス・雑菌などを不活化させる効果を見込めます。

新型コロナウイルスだけでなくインフルエンザやノロウイルスなど様々な感染症に効果を期待できるので、医療現場はもちろん、自宅などにも設置すると良いでしょう。

まとめ

  • 感染対策におけるゾーニングとは、病原体による汚染の有無によって病棟の空間分けを行う考え方のこと
  • スタッフや防護具の都合によっては調整が必要となるものの、基本的には病室とその他でゾーニングを行うことが推奨される
  • 医療現場では、ゾーニングだけでなく三密の回避や手指衛生、空間衛生などにも気を配る必要がある

病院内でのゾーニングによる感染対策は、患者だけでなく医療現場で働くスタッフの感染リスクも減らすことのできる効果的な手段と言えます。

またゾーニングの考え方は家庭内での療養においても役に立つので、医療現場で働く方はもちろん、そうでない方であっても知識として備えておくと良いでしょう。

関連記事はこちら

公式サイトでのご購入 amazonでのご購入

公式サイトでのご購入