基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL産生)とは。その感染対策を解説

ESBL産生とは?具体的な症状や在宅時に有効な感染対策を解説

・公開日:2021.03.02最終更新日:2021.05.18

ESBL産生菌は健康な人でも保菌していると言われていますが、ひとたび発症すると死に至る可能性もあると話題になった細菌です。犠牲者をできるだけ抑えるためには、徹底した感染対策が必要になります。

医療機関や介護施設(デイサービス)などでは厚生労働省の感染対策マニュアルにしたがって衛生管理が行われていますが、在宅時に個人で予防することもポイントになります。

しかし、「在宅時に有効な感染対策」と言われても、病院などでの勤務経験がなければ具体的にどのようなことをすれば良いか分からないでしょう。

そこでこの記事では、在宅時にも有効なESBL産生菌の感染対策を紹介します。

この記事は、次のような人におすすめの内容です。

  • ESBL産生菌の在宅時の感染対策について知りたい人
  • ESBL産生菌患者を在宅で看病する人

いま話題のESBL産生菌とは?在宅時の感染対策の前に基本情報を確認

いま話題のESBL産生菌とは?在宅時の感染対策の前に基本情報を確認

ESBL産生菌とは、Extended spectrum β-lactamases(基質特異性拡張型ベータラクタマーゼ)という酵素を作り出す細菌のことです。腸内細菌である肺炎桿菌や大腸菌などから検出されることが多く、抗菌薬を分解する力を持っています。

ESBL産生菌が分解できる抗菌薬は幅広く、第三・第四世代セファロスポリンやペニシリンも無効化されます。

また、細菌から細菌への移動が可能で、移動した先の細菌もESBL産生菌を生成できるようになるのが特徴です。移動できる菌の種類は限定されておらず、菌種を超えた移動も可能であることが分かっています。

入院歴や抗菌薬の使用歴がない人からもESBL産生菌が発見されることもあり、日本でも増加傾向にある状況です。ただし、健康上はESBL産生菌を持っていても問題は発生しないことが分かっています。ESBL産生菌株から感染症が発生した場合は、注意が必要です。

近畿耐性菌研究会の情報によると、2000年から2009年の10年間で検出率が増加しています(0.7%から5.2%に増加)。

以上の内容から、ESBL産生菌を防ぐためには適切な感染対策を行う必要があると言えます。

引用:
https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/news/shimin/20121214.html
https://pro.saraya.com/fukushi/kansen/shurui-tokucho/esbl/

ESBLの主な症状

ESBL産生菌の症状としては、以下のようなものが挙げられます。

症状 内容
尿路感染症 尿路で細菌が増殖して炎症が起きた状態。膀胱炎や腎盂腎炎につながる可能性が高い。排尿時に膀胱・尿道に痛みを感じたり、残尿感を感じたりする病気。
肺炎 肺の中にある肺胞が細菌などで炎症が起きた状態。発症すると、激しいせきや息切れ、胸の痛みなどを感じる。高熱が出ることもあり、呼吸困難に陥る可能性もある。
手術部位
感染症
別名SSI。手術を受けた部位で発生する感染症。発熱やズーンと重い疼痛、限局性腫脹などの症状が見られる。

上表に記載した症状の他にも、ESBL産生菌の発生社の抵抗力が低下していると髄膜炎や肺血症、創部感染症などにつながる場合もあります。

引用:
https://pro.saraya.com/fukushi/kansen/shurui-tokucho/esbl/
https://doctorsfile.jp/medication/240/
http://jpccs.jp/10.9794/jspccs.35.214/data/

ESBLの感染経路

ESBL産生菌の感染経路は、接触感染だと言われています。具体的には、医療器具や医療従事者の指などがESBL産生菌の感染源です。

特に、尿路留置カテーテルの使用時やオムツ交換、糞便の処理に注意が必要とされています。在宅で看護する場合は、トイレを掃除するときにも十分気を付けなければいけません。

ESBLの検査方法

従来、ESBL産生菌は大腸菌から確認されることが多かったので、便培養による検査が行われていました。しかし、近年は尿路感染が確認されるようになったことで、尿培養で分離する頻度も増えています。

加えて、血液培養にも注目が集まっている状況です。

引用:https://www.sysmex.co.jp/products_solutions/library/journal/vol11_no3/bfvlfm000000d1xh-att/2011_Vol11_3_3.pdf

ESBLの治療方法

ESBL産生菌は、投薬で治療されます。カルバペネムが使用されることが多いですが、in vitroで感受性を示すタゾバクタム・ピペラシリンが治療薬として使われることもあります。

ただし、タゾバクタム・ピペラシリンを重疾患者に投薬すると、死亡率が上がるという情報があるので注意が必要です。

キノロンが使用されるケースもありますが、感受性がなければ耐性があることが多いとされています。

引用:http://hospitalist.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jc_20170426_02.pdf

ESBLの在宅時に有効な感染対策はある?

ESBLの在宅時に有効な感染対策はある

在宅でESBL産生菌の保菌者を看護する場合に、有効な感染対策をまとめて紹介します。

引用:
https://www.inazawa-hospital.jp/media/esbl.pdf
https://pro.saraya.com/fukushi/kansen/shurui-tokucho/esbl/
https://www.mhlw.go.jp/content/000501122.pdf

在宅時の感染対策1:手指を消毒を徹底して感染を予防する

ESBL産生菌の保菌者がいる部屋に入る前や部屋から出るときは、必ずアルコール消毒して感染対策をしましょう。

厚生労働省が発行する高齢者介護施設における感染対策マニュアルには、汚染が目に見える場合はアルコール消毒の前に水で手を洗うと効果的だと記載されています。

なお、消毒液の中には、手指用ではないものも販売されています。ものに使用するアルコールだと手指が荒れる可能性があるので注意しましょう。

ESBL産生菌の感染対策として効果がある消毒液としては、以下のようなものがあります。

  • アルコール
  • クロルヘキシジン
  • ポピドンヨード

正しい消毒方法を知っておこう

感染対策で消毒液を使用する場合は、正しい手順で手指に付けることが大切です。消毒液の付け方を教えてもらったことがない人は、以下の手順を確認して在宅時に実践してみてください。

  1. 消毒液を適量てのひらに出す
  2. 両方の手のひらを擦る
  3. 手の甲に消毒液を擦りこむ
  4. 爪の間や指先に擦りこむ
  5. 指の間に消毒液をいきわたらせる
  6. 親指をもう片方の手で包んで擦りこむ
  7. 手首に消毒液を擦りこむ

上記の手順で消毒液を手指全体に擦りこんだら、十分乾燥させます。消毒液がきちんと乾燥した状態を確認するまでが正しい消毒方法で、しっかりとした感染対策になります。

在宅時の感染対策2:看護中は手袋を使用して直接接触しない

ESBL産生菌の保菌者と在宅時に接触する場合は、直接手で触れるのではなく、手袋を着用して感染対策しましょう。

手袋を着用するタイミングは、ESBL産生菌の保菌者がいる部屋に入る前です。入った後に手につけると、すでに手指にESBL産生菌が付着していることもあるので感染対策として有効とは言えません。

また、看護が終わって部屋から出たら、すぐに手袋を外して誰も触れることがない場所に捨てて感染対策を徹底しましょう。

在宅時の感染対策3:保菌者は個室にいてもらう

感染対策をするためには、ESBL産生菌の保菌者に在宅時は個室で生活してもらうのが有効です。自宅にESBL産生菌の保菌者が複数いる場合は、1つの個室で管理しても構いません。

新たな感染を予防ためにも、在宅時でも看護以外でその部屋に入室することがないようにすることをおすすめします。

在宅時の感染対策4:できればメディカルマスクを着用する

ESBL産生菌の保菌者に咳などの症状が見られる場合は、在宅時でもマスクを付けて感染対策をしましょう。できれば医療用のサージカルマスクが好ましいです。

在宅時の感染対策5:部屋の掃除にはアルコールを使用する

ESBL産生菌の保菌者が在宅する部屋を掃除する場合は、アルコールが入ったクロスで清拭消毒して感染対策しましょう。患者と看護者がよく手を触れる場所だけで構いません。

部屋の床などは、通常の掃除方法で清潔な状態を保てば大丈夫です。

在宅時の感染対策6:保菌者専用の物品を用意する

原則として、ESBL産生菌の保菌者が使用する物品は専用のものを用意します。どうしても難しい場合は、他の人が物品を使用する前に感染対策としてアルコールが含まれたクロスを使って消毒しましょう。

ケア用品や洗濯の共有はなるべく避けることをおすすめします。

まとめ

ESBL産生菌が原因の感染症を発症すると、最悪の場合、死に至ることもあります。生命を脅かす怖い細菌ですが、在宅看護でさらなる感染を防ぐためには徹底した感染対策が必要不可欠です。

在宅で看護する場合は、今回紹介した内容を参考に感染対策を行ってみてください。なお、症状が悪化したり、在宅で感染対策をするのが難しい場合は、在宅看護を選択せずに、できるだけ早めに医療機関に相談することをおすすめします。

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